新しい年度になりました。
あなたの会社にも新入社員が入りましたか?
新入社員が真っ先に覚えなければならないのが敬語です。
なぜならば言葉遣いがビジネスの基本だからです。
本日はビジネスシーンで使える敬語についてお話ししますね。
これを押さえればあなたも敬語マスターだ!
ビジネス敬語の基本はこれ!
ビジネス敬語の基本は次の三つです。
・尊敬語
・謙譲語
・丁寧語
【 尊敬語 】
尊敬語は相手の動作を高めて敬意を表す言葉です。
表現方法には主に次の三つの方式があります。
・受身の言葉から転じた「れる」「られる」を用いる
・「お~になる」「お~くださる」「~される」「~なさる」などの動作を高める“型”を用いる
・「おっしゃる」「いらっしゃる」などの動作を高める用語を用いる
また漢語では「御社」「貴信」「芳名」「ご○○」などの用語を用い、和語では「お便り」「お求め」「ごもっとも」「お○○」などの用い方をします。
【 謙譲語 】
謙譲語は自分の動作を低めることによって、相対的に相手の立場を高くします。
そうして相手に対する敬意を表す言葉です。
謙譲の表現には主に次の二つの方式があります。
・「お~する」「お~いたす」「お~できる」などの“型”を用いる
・「申す」「参る」「いたす」「おる」などの動作を低める用語を用いる
また漢語では「当社」(最近は「弊社」は用いない)「拙文」「小生」などの用語を用い、和語では「手間ども」「かしこまる」「承る」などの言葉を使います。
【丁寧語】
「山田さんがおっしゃった(よ)」では、日記や家族内では問題ありませんが、ビジネスでの用い方としては、十分な敬語表現とはいえません。
丁寧語は直接の相手にだけ効果が及ぶ、「礼としての敬語表現」なのです。
目の前の相手を尊敬するからとか、話題の人物を敬うからということとは直接関係がありません。
人間関係の場におけるマナーなのです。
その意味で丁寧語は、敬いの言葉というより、言葉の身なりを整える言葉といえます。
ビジネス敬語の基本はこれ!敬語の三方式。
“動作の敬語”の表し方には、三つの方式があります。
・別語方式
・接語方式
・併用方式
これら三つを「敬語の三方式」と言います。
【 別語方式 】
通常表現・尊敬表現・謙譲表現で、別の言葉に置き換わる方式です。
普通に表す(通常) → 高めて表す(尊敬) → 低めて表す(謙譲)
話す → おっしゃる → 申す
行く → いらっしゃる → 参る(うかがう)
食う → 召し上がる → いただく
片面(へんめん)表現といって、「死ぬ」→「亡くなる」のように尊敬語だけがあって謙譲語がない言葉もあります。
[※※ 問題 ※※]
突然ですが、ここで問題です!
「父が亡くなりましたので・・・」という表現は正しいか、間違いか?
えーと、「亡くなる」は尊敬語かあ~。
たしか身内を表す時に尊敬語は使っちゃいけなかったなー。
ということは、これは間違いだ!
ファイナルアンサー!
[※※ 回答 ※※]
ブッブー!残念!
「亡くなる」には丁寧語としての働きもあるので、聞き手・読み手への対者敬語として、父に用いるのは誤りではありません。
死者に対する社会通念としてこのような用法が生まれたものと思われます。
【 接語方式 】
通常表現・尊敬表現・謙譲表現のそれぞれで、言葉の本体はそのまま変わりません。
代わりに前後に動作を高めたり動作を低めたりする働きの語を接合することによって、尊敬や謙譲の表現に切り替える方式です。
接語方式では“型”が重要な役割を持っています。
主な“型”は次のとおりです。
①動作を高める型(尊敬)
・ お~になる
・ お~くださる
・ お~たまわる
・(お)~なさる
・ ~される
・~れる ~られる
②動作を低める型(謙譲)
・お~する
・お~いたす
・お~できる
・お~にあずかる
・お~願う
普通に表す(通常) → 高めて表す(尊敬) → 低めて表す(謙譲)
話す → お話しになる → お話しする
持つ → お待ちになる → お待ちする
取る → お取りになる → お取りする
ここで何か気づきませんか?
そう!・・・尊敬の表現と謙譲の表現がとてもよく似ていることです!
つまり「お話しできる」「お持ちできる」といった謙譲の型をもって、「ピザはお持ち帰りできます」「設備を自由にご利用できます」などのように、誤った言葉遣いを用いるケースが、目に余るということです。
相手の動作が、謙譲表現になってしまっているではありませんか。
動作を高めて表現したつもりでいながら、動作を低めて表しているのです。
敬語は難しいと言われる理由の一つがここにあります。
尊敬の表現方法と謙譲の表現方法が非常に似ているんです。
そのため、敬語を正しく学ばないと身に付かないんです。
尊敬語かと思っていたら実は謙譲語だったということが多いんです。
でもビジネス上「あなたの今の言葉は間違っていますよ!」と指摘してくれる人はいません。
ビジネスの話を進めるのが重要だからです。
でも「先程の担当者の言葉遣い、何か変だったなあ~!」と言う感覚だけは残ります。
これはとても恐ろしいことです。
知らず知らずの内に相手に違和感を蓄積させてしまうからです。
その違和感のせいで信頼関係を築けずに商談のまとまらないことがあるからです。
③併用方式
動作の敬語には別語方式と接語方式では分類しきれない言い方があります。
“別語”でありながら“接語”の型を取り込んだ表現方式です。
例えば「召す」という語があります。
しかし、ただこれだけでは「着る」の尊敬語か、「食う」の尊敬語か、あるいは「呼ぶ」の尊敬語なのか判然としません。
「お召しになる」とすれば、どうでしょうか。
「着る」の尊敬語として完成することがわかります。
「召し上がる」とすれば、「食う」の尊敬語として完成します。
この“型”をみれば気づくように、「お召しになる」は「召す」という別語の尊敬語を用いながら、「お~になる」という接語を取り込んでいるのです。
つまり、別語と接語とを併せもった表現方法になっているわけです。
練習問題
練習問題を出します。
次の表現は正しい表現でしょうか?
それとも誤りでしょうか?
誤りならばどこがおかしいか分かりますか?
【 問題Ⅰ 】
「社長は次の新幹線まで、どこでお待ちするのですか?」
《 回答 》
これは間違いです。
新幹線を待つのは社長です。
しかし「お~する」は謙譲の表現でしたね。
尊敬のつもりが謙譲の表現になっているよくある間違いのひとつです。
正しくは「社長は次の新幹線までどこでお待になるのですか?」です。
他には「社長は次の新幹線までどこで待たれるのですか?」が良い表現です。
これは簡単ですね。
次はどうでしょうか?
【 問題Ⅱ 】
「部長!明日の会議の席上で会社の新方針についてお話出来ますか?」
《 回答 》
これも間違いです!
「お~できる」は「②動作を低める型」でしたね。
つまり謙譲の表現です。
これでは部長の「話す」動作を低めています。
正しくはこうです。
「部長!明日の会議の席上で会社の新方針についてお話されますか?」
この表現は「①動作を高める型」の「~される」を使っています。
可能かどうかを問うのならば、「部長!明日の会議の席上で会社の新方針についてお話になれますか?」が良いです。
じつは「お~出来る」を使った謙譲表現を尊敬表現と勘違いしている人が多いんです。
街中にも「店内商品は全てお持ち帰り出来ます!」などの掲示を見たことがありませんか。
持ち帰るのはお客様ですが、お客様の行為を低める表現になっています。
正しくは「店内商品は全てお持ち帰りになれます!」です。
まとめ
本日はビジネスシーンで使える敬語についてお話ししました。
「お~になる」と言う型が重要でしたね。
武道やスポーツも型が重要なのと同じです。
この型を覚えておくと「あれ!この表現何だかおかしくない?」と言うような時に迷わずに済みます。
一番間違えやすいのが「お~出来る」は謙譲表現だということです。
このようにして見ると街中のあちこちに「お~できる」の表現を発見出来ます。
そんな時は「このお店もまだまだだな!」とちょっと大人になった気分がしますよ。
あなたの参考になれば幸いです。
最後まで読んでくださりありがとうございます。