義理の父から高枝切りバサミのメンテナンスを依頼されました。
動くことは動くんですが、切りにくいとのことです。
見るとだいぶ錆びています。
そこでこの高枝切りバサミのサビ取りをしてみました。
するととても切りやすくなりましたよ。
本日は高枝切りバサミのメンテナンスの基本であるサビ取りについてお話ししますね。
あなたの参考になれば幸いです。
高枝切りバサミの修理でサビの落とし方はこれ!
義父(ちち)は庭の植木の剪定(せんてい)をしています。
ところが最近ハサミの切れ味が悪くなってきたそうなんです。
そこで私に「なんとかならんかのう~?」と依頼が来た訳です。
義父の話によると、「昔はもっと切れ味が良かったのに、最近使いにくくなった!」とのこと。
「何でも修理屋」を自任している私としては、ここは何とか修理してマスオさんとしての株を上げたいところです。
妻の実家に入っているのでサザエさんのマスオさんと同じ状況です。
まずは症状を見てみました。
レバーは普通に動きます。
伸縮機能にも特に問題はありません。
「これはサビを取るだけで何とかなりそうだぞ!」と予測を立てました。
【 高枝切りバサミのサビ取り方法 】
ネット上で紹介されている主なサビ取り方法は次の三つです。
・ボンドを塗ってはがす
・お酢につける
・油を付けてヤスリで磨く
【 ボンドを塗ってはがす 】
木工用のボンドを錆びた面に塗って乾かします。
木工用ボンドは白い色をしていますが、乾くと透明になります。
透明になったボンドをはがすとサビが一緒にはがれていくんです。
ネットでも多くの方が挑戦されていますね。
私もやってみましたが、「8割くらいは取れる!」と感じました。
その後仕上げに磨けば良い結果が得られます。
ただし、酷いサビにはあまり効き目を実感しにくいのと、ボンドが乾くまで10時間ほど待ちきれないことが難点です。
だって思い立ったらすぐに作業をしたいじゃないですか!
技術としてはまあまあですが、待ち時間が長いので私は嫌なんです~!
【 お酢につける 】
もう一つ、一般家庭にあるものでサビを落とすことの出来るものと言えばお酢です。
お酢は酸性の溶液です。
サビは鉄に水と酸素が結びついて出来るものです。
お酢などの酸性の溶液に浸(ひた)すとこのサビが化学反応の力によって落ちます。
サンポールなどの酸性の洗剤を使ってもサビが落ちるのはこのためです。
しかし、この方法は欠点もあります。
なぜならば、一度お酢につけた鉄は今度は錆びやすくなるんです。
サビも落ちるけれども今度は錆びも付きやすくなります。
お酢につけてサビを落とした後は、お酢の成分を綺麗に洗い流して、速やかに油を塗ったり、塗装したりしなければなりません。
【 油を付けてヤスリで磨く 】
これが機械物のサビを落とす最も一般的な方法です。
油を付けて真鍮(しんちゅう)製のブラシで磨くのと頑固なサビも取れます。
真鍮製のブラシは鉄(スチール)よりも柔らかい金属なので金属の塗装面を傷つけずに磨くことが出来ます。
私は自転車の修理を趣味でやっていますが、自転車のサビを落とす時に、油を付けて真鍮製のブラシで磨いています。
それでも落ちないときに「サビ落としクリーム」を使っています。
高枝切りバサミや剪定(せんてい)ばさみ、刈り込み鋏(かりこみばさみ)芝刈り機など、ガーデニング用のほとんど全ての鋏(はさみ)類のサビ落としに使えます。
油を付けてヤスリで磨く方法は、油がサビを防止する役目も果たしますからお酢につける方法ほど神経質にならなくて済みます。
やはり広く認知されている方法には訳があるんですよね。
と言うことで私が最もおすすめするのも、やはり油を付けてヤスリや真鍮ブラシで磨く方法です。
高枝切りバサミの修理方法!分解しヤスリで磨く!
実際にやってみたので紹介します。
こちらがメンテナンスの依頼を受けた高枝切りバサミです。
先端部分が錆びていますね。
サビは赤錆なんですが、樹液などが混じり合って真っ黒くなっています。
「え~っ?黒いから黒サビじゃあないの?」
いえいえ、一部黒サビを付けて表面を保護しているところもありますが、刃のこすれる部分は基本的にシルバーになっているのが正常です。
この写真では刃のこすれる部分も真っ黒になっていますね。
これは赤錆(あかさび)と樹液、ホコリなどが混じり合って真っ黒くなってしまったものです。
この赤錆と樹液とホコリの混ざったものを、ヤスリで磨いてこすり落とすのが今回のメンテナンス方針です。
これだけでも切れ味が格段に良くなると予想出来ました。
【 刃の外側のヤスリがけ 】
手始めに組み立てたままヤスリで刃の外側を磨いてみました。
う~ん、なかなか上手く磨けません。
そこで刃先を分解して磨くことにしました。
【 刃の分解 】
簡単な構造ですが万が一組み立てられなくなるとまずいので、分解する前に写真を撮ります。
そしてネジやナットを外していきます。
ネジやナットは全て一般的な右ネジです。
つまり左に回すと外れます。
下記の写真は磨いている途中のものです。
すでに綺麗になり始めています。
一方こちらの刃は柄から外すことが出来ませんでした。
左の赤い部分のネジが特殊な形をしているのが分かりますね!
伸縮機能付きの高枝切りバサミなので、この特殊ネジを外すと組み立てが難しいのではないかと予想されます。
なのでこちらの刃はこれ以上分解しないで作業をすることにしました。
【 刃の構造 】
ここでちょっと横道にそれて刃の構造についてお話しします。
少し難しい内容になりますが、刃物の構造を勉強するとなぜこの研(と)ぎ方をするのかが良く分かります。
今回はハサミを研ぐのではなくてサビを取るだけですが、必要な内容なので少しお付き合いくださいね。
これが刃の断面図とその名称です。
「シノギ」は「シノギを削る」という慣用句のシノギですね。
また「峰」はルパン三世に登場する石川五右衛門の「安心しろ!峰打ちだ!」の峰ですね。
このようにハサミも小刃(こば)、刃表(はおもて)、シノギ、峰、裏刃といくつかの部位に分かれているので、それぞれ部位ごとに磨くのが基本です。
【 刃表のヤスリがけ 】
刃表をヤスリで磨きます。
先ほどこの部分を「刃の外側」と呼びましたが、正式には刃表(はおもて)と言います。
この部分にヤスリを密着させてこすりながら磨きます。
下記の図のように、刃表にヤスリを密着させて前後にこすると簡単にサビと汚れが取れます。
磨く時は油を差して磨くと簡単です。
油は灯油でも良いし、ミシン油、KURE5-56でも構いません。
ヤスリ以外には真鍮製(しんちゅうせい)のブラシが便利です。
真鍮製のブラシならヤスリのように刃表に当てる角度を気にする事なくサビや汚れだけを落とすことが出来ます。
強力なのはやはりブラシよりもヤスリです。
力はあまり必要ありません。
私は100円均一ショップで購入したダイヤモンドヤスリを使いました。
ヤスリにも木工用と金属加工用とがありますが、これは「硬い物用」つまり金属加工用です。
【 小刃のヤスリがけ 】
小刃(こば)も同様にヤスリで削ります。
下記の図のように小刃の角度に合わせて削ります。
【 シノギの磨き方 】
シノギも同様に磨きます。
ここは本来黒サビを付けて赤サビの付かないように保護してあるところなんです。
だからここは磨かないほうがいいんですが、この刃物はデコボコしており赤錆がたくさん出ていたので黒サビがハゲるのを承知でヤスリで磨きました。
【 刃裏の磨き方 】
刃裏を磨く時は注意が必要です。
断面図を見れば分かるように、「スキ」と言う凹(へこ)みがあるんです。
このへこみは見ても気付かないほどの僅(わず)かなものですが、ほとんど全てのハサミにこのスキがあります。
そしてこのスキの良し悪しによって切れ味の良い悪いが出るんです。
ウチの高枝切りバサミにも目では分からないほどですがスキがあるので、このスキを潰(つぶ)してしまわないように磨きます。
そのコツはヤスリの頭を使って、刃裏の曲面に沿うようにして磨きます。
こうすれば、スキを潰さずに赤錆(あかさび)だけを落とすことが出来ます。
【 峰の磨き方 】
峰は丸くなっていましたので、角度を変えながら丸く磨きました。
高枝切りバサミの組み立て方とその後のメンテナンス方法!
磨きが終わったら組み立てます。
分解した反対の手順で組み立てます。
手順と言っても簡単な構造なので多少順番が前後しても何の問題もありません。
ネジを表から入れるか裏から入れるかの違いくらいです。
そんな時に分解前の写真があると便利です。
それでも分からなくなったら、ネットで売っている高枝切りバサミの商品の写真を見て下さい。
ヤフーオークションの出品商品を見ても詳しい写真の掲載されていることがあるので参考になりますよ。
【 支点の締め具合が大事 】
一番重要なのは支点のネジ(ナット)の締め具合です。
このナットがきつ過ぎるとハサミが開閉できませんし、緩すぎると枝が「フニャ!」となって切ることが出来ません。
ハサミの開閉に影響がない範囲でキツク締めてください。
【 油を差す 】
組み立てたら全体に油を差して余分な油は拭き取ります。
このやり方ならそれほど神経質にならなくても、もともと油を差してヤスリで磨いていますので油は十分に行き渡っています。
以上で完成です。
裏面も綺麗になりました。
試しに庭の植木を剪定してみましたが、とても軽く切れるようになりました。
剪定作業が楽になると嬉しいですね。
まだうっすらと黒い汚れが残っていますが、これくらいで十分です。
【 日常のメンテナンス 】
今後の日常のメンテナンスですが、使用したら樹液等でまたすぐに汚れますので、使用のたびに汚れを取って収納するようにしてください。
汚れの取り方はKURE5-56のような潤滑剤を吹き付けて新聞紙などで拭き取るだけでほとんどの汚れが綺麗になります。
刃物なので指を怪我しないように注意してくださいね。
普段はヤスリで磨く必要はありませんよ。
まとめ
本日は高枝切りばさみのメンテナンス、サビ落としについてお話しして来ました。
サビを落としただけなんですが切れ味が蘇(よみがえ)りました。
樹液等が付着して動きが悪くなった時に義父がネジを少し緩めて使っていたのも判明しました。
それでハサミの刃が合わなくなっていたんですね。
あなたの参考になれば幸いです。
最後まで読んでくださりありがとうございます。